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ヴィゴ評論(1)
映画は、ヴィゴの父親に対する愛情と理解が彼の作家的背景を反映させているところを丁寧に描いている。ただ、何度も繰り返しカットバックされる父の逮捕シーンが諄いと言えば諄い。ヴィゴの反体制の根源が、その出来事に起因する説得力はあるのだが、表現過多になっている。ジュリアン・テンプル監督の描きたかった主題は、ポーランド出身の妻とヴィゴの夫婦愛と、彼の命を懸けた映画愛の2点。1930年代前期の手回しカメラによる撮影シーンや製作費捻出に苦労するエピソード、そのプロデューサーとの商談風景にテンプル監督の映画愛とヴィゴに対するオマージュが心地良く感じられる。同じ肺炎に罹っている男女の率直な愛欲も嫌らしさがなく美しく描かれている。伝記映画としては、とても好感の持てる作品に仕上がっている。