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男はつらいよ 寅次郎ハイビスカスの花 特別篇評論(4)
「男はつらいよ」シリーズ第49作。
Huluで「HDリマスター版」を鑑賞。
渥美清の死後、尚も衰えぬ寅さん人気に応える形で、山田洋次監督が一番のお気に入りだという第25作「寅次郎ハイビスカスの花」に、満男の寅さんへの追憶シーンと「寅次郎忘れな草」および「寅次郎相合い傘」の一部シーンを加えて再編集。音響もモノラルからドルビーステレオに再録音して公開された特別篇。主題歌は八代亜紀が歌っておりました。
「寅次郎紅の花」観賞後ということで、本作が公開されたときにはもう寅さんはいないんだなぁ、という感慨が押し寄せてとても寂しい気持ちになりました。
でも、不思議と悲しいというわけでは無いんです。満男も言っていたように、今日も寅さんは日本のどこかを旅してるんじゃないかなと思えたからです。
寅さん、あなたは今どこにいますか…?
劇中でも2年経過しているようです
満男は前作の終盤では泉ちゃんと結婚秒読みみたいなラブラブだったのに、すっかり元気なく気力を無くして投げやりです
ラストシーンで分かるのは、どうやら未だに両親と実家暮らしのようです
今でいう子供部屋おじさんですね
くるまやは三平と加代の店番で変わりないようです
寅さんも満男の独白でいまだにどこかをフーテンしているようだと分かります
リリーさんとはどうなっていることやら
男はつらいよシリーズ恒例の冒頭の夢が本作では復活しています
それは国府津から東京駅までの約1時間電車に揺られてみた夢です
それは寅さんとリリーさんの物語です
満男は寅さんの現代版です
会社勤めは、紅の花事件も専務さんの温情で会社も首にならず続いているようです
でもカバンを下げて日本各地に出張して営業するのは、台詞のように寅さんのテキ屋稼業と何の違いがあるのでしょう
結局、紅の花での満男の物語は、ハイビスカスの花での寅さんと同じです
女性の愛を受け止めれない勇気のない男の恋愛の顛末です
だから結局、ハイビスカスの花の寅さんと同じく、満男もまた泉ちゃんの愛を受け止めれられず、紅の花のラストのラブラブ状態から逃げ出してしまったようです
きっと自分から壊してしまったに違いありません
寅さんがまた現れたら、きっと紅の花の時みたいに力付けてくれのになあ
もしかしたら泉ちゃんとよりを戻すのを手伝ってくれたり、知恵をだしてくれるのになあ
いつまた寅さん帰って来るんだろう?
今度の旅はちょっとばかり長いなあ
劇中では寅さんは死んではいないのです
ひっこり柴又に帰ってくるはずなのです
私達の心の中にも寅さんは今も生きています
死んでなんかいないんです
どこかの居酒屋で隣合わせるかも知れません
忘れな草、相合い傘、相合い傘ハイビスカスの花、紅の花が寅さん本線です
紅の花でシリーズが終了して結局良かったのです
それを監督と私達はもう一度確認して納得するための映画なのです
主題歌が八代亜紀にバトンタッチされました
何故彼女なのでしょうか?
主人公なら吉岡秀隆が歌うべきです
八代亜紀はマドンナでもありません
でも目を閉じて聴いていると、自分にはリリーが歌っているかのように聞こえてくるんです
声質が似ています
彼女の独得の歌唱も控え目にしています
だからリリーさんのつもりで聴いて下さいという監督のメッセージだったのだと思います
本作にはリリーさんは回想シーンだけで再登場はしません
彼女を歌で思いだす方がよい
それも大歌手の名歌唱で
相合い傘での寅のアリアを思い出して、リリーさんのリサイタルでの歌唱と受け止めて
そういうことなのだと思います
新撮は冒頭、ラストのほんの僅か。後はほぼ「ハイビスカスの花」
シリーズ屈指の名作ゆえとても面白い。が、やはり既視感は否めない。寅さんへの鎮魂歌として。
・八代亜紀の主題歌、ジーンときます
・鰻を貪り食う寅、大爆笑。この頃の寅さん、一挙手一投足に勢いがあります。
・ニセ満男(失礼)に強烈な違和感。
・エンディングの2人の店員さんになぜかほっこり。シリーズ終盤に馴染んでたゆえか(笑)
冒頭と結末に新しく撮った満男が物思いにふける場面がくわえられ、主題歌は八代亜紀。八代亜紀の歌はすごくよかったのだけど違和感もすごい。
寅がリリーと沖縄で生活を営んでいるのに、水族館の若い女の子とデレデレしてリリーの怒りを買う。愛着障害からくる試し行動ではないだろうか。元々、産みの親に捨てられ、さくらの生みの親である女性が寅の育て親だったのだが、あまり愛着が育まれず、それで15歳で家出したのかもしれない。そうして、自分に好意を寄せてくれるリリーの愛情がどこまでなのか、試し行動をしているように見えた。リリーは親でもなんでもないので、すぐに喧嘩別れしてしまう。
「リリーさん、お兄ちゃんは愛着障害があるからそんなふうなことをしてしまうのよ。ちょっと我慢してくれればすぐに収まるから優しく抱きしめてあげて」とさくらからリリーに説明してあげて欲しかった。もちろんリリーにはそこまで苦労して寅を愛する義理はない。
とらやで寝っ転がった寅がふと「リリー、オレと所帯を持たないか」とプロポーズするところは涙が出る。そうだよ、それが一番だよとさくらやひろしに煽って欲しかった。