「エル・トポ」「ホーリー・マウンテン」の鬼才アレハンドロ・ホドロフスキー監督がこれまで作り上げた映像表現を自ら解き明かす集大成的作品。ドイツの精神分析学者エーリッヒ・フロムとともに精神分析を学んだホドロフスキーは、自身が考案したが考案した心理療法「サイコマジック」を「科学を基礎とする精神分析的なセラピーではなく、アートとしてのアプローチから生まれたセラピーである」と語る。ホドロフスキーのもとに悩み相談に訪れた10組の人びとが出演し、「サイコマジック」がどのように実践され、作用しているのかが描かれる。そして、自身の映像表現に「サイコマジック」がどう作用しているかを過去作やさまざまな実験的な映像を用いて実証していく。
ホドロフスキーのサイコマジック評論(15)
心の傷ついた人々をドン底から救い出すホドロフスキー監督。その姿は正に救世主そのもの。90歳を超えて尚も人助けに徹するホドロフスキー監督。その途方もない他愛と優しさに涙が出た。迷っている人々の行く道を照らしてくれる人類の宝の様な人。心の底から長生きして欲しいと思う。
とかくオカルト的に見えてまう行為も、人間と誠実に接し行動する様を見せつけられると、何も否定すべきものがない。よくぞここまでやりきれるものだと感心するのだが、それだけにとどまらず、ひとりの創造主を見ているような気がした。
数々の事象をオムニバスのドキュメンタリー形式で描かれているこの作品は、いったい何なのか。映画であることは間違いないとは思うけれど、その枠に納まりきらない強烈なパワーを感じてしまう。
正直、凡人の自分にはついていけてないけれど、いつこの創造主にすがりつくか分からないわけで、ただただそうならないことを願うばかりではあるけれど、同時にこの存在を貴重に思えて仕方ない。
数々の感動を目の当たりにすると、ホドロフスキーの信者になりそう。
エル・トポが無性に見たくなった。あれは単に興味本位で作られたものではないと確信すると、ホドロフスキー作品がこれまで以上に光り輝くような気がする。
勝手ながら、この作品は相当重要な意味を成すと思ってしまった。
最初は母子を靴墨で塗りたくったりして、コミカルなサイコマジックなのかと思っていて、男女の裸が登場すると、単にエロマッサージの世界じゃねーか?などと胡散臭く感じられました。一つだけ、巨大カボチャをハンマーで叩き割る青年のエピソードは効果絶大だな!と、共感さえ覚えました。この時点から徐々に引き込まれてしまいます。
経血チェリストや経血絵画に至ると、あ、やばいものを見てしまったと気づき、もうホドロフスキーの術中にはまっていく自分。やっぱり、これはアートだ!などと、妙に感動すら覚えてしまいました。ただ、金粉ショーはいかがなものか?いや、これだけは絶対にやらせのギャグに違いないと、47歳童貞の彼に同情してしまいました・・・
なんだか新興宗教がかった怪しいセラピー。もう彼の罠にはまってしまい、癒されたいとまで感情移入してしまう・・・もしや、これが狙いだったのか、これらのサイコマジックによって治癒されていく登場人物ではなく、映画の観客に魔術をかけたに違いない。でも、俺は実験台にされたくない・・・特に金粉ショーには。
準備が整えば、起こることに身を委ねれば良い。
他人がもたらすことではなく、本人の中に隠れている力が、殻を破る。そして本来の命が生きられる。
ホドロフスキーも潜在意識と言っている。
エーリッヒ・フロムの名前が出てきたのが嬉しかった。昔の先生に会ったみたい。