アイヌ民族が口頭伝承してきた叙事詩ユーカラを「アイヌ神謡集」として日本語訳した実在の人物・知里幸恵の人生を描いたドラマ。大正6年、学業優秀な北里テルはアイヌとして初めて女子職業学校に入学するが、理不尽な差別といじめに遭う。ある日、アイヌ語研究の第一人者である東京の兼田教授が、テルの叔母イヌイェマツのもとへアイヌの叙事詩ユーカラを聞きに来る。テルは教授の強い勧めでユーカラを文字にして残すことに着手し、その日本語訳の素晴らしさから、東京で本格的に活動することに。同じアイヌの青年・一三四(ひさし)や叔母に見送られ、東京へと旅立つテルだったが……。「あつい胸さわぎ」の吉田美月喜が主演を務め、テルに思いを寄せる一三四を「ソロモンの偽証」の望月歩、叔母イヌイェマツを島田歌穂、兼田教授を加藤雅也が演じる。監督・脚本は「ぼくらの七日間戦争」の菅原浩志。
カムイのうた評論(8)
徹底した和人(シャモ)への同化政策の荒波のなかでも、民族の尊厳を失わず、文字を持たなかった自らの民族の文化を後世に伝承する事業に、文字どおり心血を注いだ彼女の生きざまに。
涙こそ流れませんでしたが、それは、作品の完成度の問題ではなく、彼女のアイヌとしての矜持の高さに、胸はいっぱいにはなるものの、泣く余裕、暇(いとま)すら与えられなかったというのが、正直なところでしょうか。
決して「演技派」と称されるような著名な俳優さんばかりが結集して製作されている訳ではないのですけれども。
しかし、上映に先だってあった菅原監督の舞台挨拶にもあった通り、民族の問題を取り上げた作品の故に、当初に監督が想定していた人物からは出演の辞退が相次ぎ、その一方で、アイヌの方々からは「和人(シャモ)のお前に何が分かって、どれ程の作品が撮れるのか」と、これまた相次ぐ取材の門前払いを食わされるなど、幾多の困難での中断を乗り越えて撮影が続けられ、遂に完成にまでこぎ着けた作品てあるためか、どの俳優さんも、それぞれの役柄を一生懸命に演じる気持ちがスクリーンから溢れて伝わるようで、とても好印象がありました。
アイヌ文化の発掘・振興に19歳の短い生涯を捧げた知里幸恵を描いた一本として、彼女と縁(ゆかり)の深い近隣市が、作品の完成を記念して開催した特別試写会の選に当たったので、劇場公開に先駆けて鑑賞することができた一本になります。
試写会の「特別」の冠に決して負けていない、素晴らしい作品(佳作)であったと思います。評論子は。
映画の中では、「土人・臭い」といった差別や偏見、和人への同化政策、墓泥棒まがいの遺骨収集、さらには厳寒の漁場での強制労働など、アイヌ民族が被った、目を背けたくなるような苛烈な差別と過酷な境遇が、しっかり描かれている。今更ながら、平成の時代まで「旧土人保護法」という差別的名称の法律があったことを思い起こす。
そうした中で、知里幸恵(作中では北里テル)が金田一京助(作中では兼田教授)と出会い、アイヌ文化がいかに優れているかを聞かされ、アイヌ民族としての誇りを取り戻すシーンには、胸が熱くなる。映画のプロローグとエピローグで朗読される、幸恵が「アイヌ神謡集」に書いた美しい序文が、幸恵の命をかけた願いと、この映画のテーマを、すべて言い尽くしているように思う。
出演者では、島田歌穂が光る。劇中のユーカラやエンディングテーマの美しさは、彼女ならでは。加藤雅也も研究一途な感じが出ている。
主人公と幼なじみの若手二人の演技は今ひとつで、二人の関係性の描写や展開もぎこちなく感じられるなど、作品としての完成度は十分とは言えないが、こうした作品が制作され、広く一般劇場で公開されるのは素晴らしいこと。多くの人に観てもらいたい。
この映画を観てそのあとの感想は千差万別になることは間違いないでしょう。
なぜならこの映画に収められているテーマは多岐に渡るからです。
差別や貧困、紛争、人類愛、師弟愛、家族愛、人間愛、映像美、喜怒哀楽、言語文学、自然愛、教育、数えたらきりがない。
文化的価値の高い作品だということは現状の海外での受賞状況をしれば納得です。
劇場のパンフレットに記載されていた海外での受賞数をみて驚嘆しました。
是非、上映期間中に映画館に足を運んでもらいたいと思います。
なぜなら、あなたがこの映画を見に行ったならば、いたるところの観客席から小さくすすり泣く声、微笑む声、物思いにふける音無き声を聴くことができるからです。それは、かけがえのない素敵な時間を共有することができ、この映画はそのような体験ができる数少ない映画のひとつだと思います。
何せ映像が美しいので
小さなお子様と一緒でも、ご高齢の方と一緒でも友人とでも、一人で行っても映画を楽しめることは間違いないです。
同じ時間と記憶を共有できるチャンスです。
このような映画に出会えて感動、感謝です。
とても良い時間を過ごすことができました。
ありがとうございます。
そのキャッチコピーの意味が映画を通して、いろいろな場面で伝わりました。
アイヌ民族について、知っているつもりでいたこと、差別や同化政策とはどんなものなのかということ‥‥改めて考えさせられる映画でした。
無知が生む偏見や差別は現代にも通じる課題です。どの年代の人にも知ってもらいたい、見てもらいたい映画だと思いました。
でも、評価の分かれる映画を作ると言うことは素晴らしいことだと思います。この映画を作ったと言うことだけは評価します。観客も結構入っていました。