「失はれた地平線」「チップスさん左様なら」のジェームズ・ヒルトン作の小説の映画化で主役は「キューリー夫人」のグリア・ガースンと「消え行く灯」のロナルド・コールマンが勤める。「大地」のクローディン・ウェストが、ジョージ・フローシェル、「紅はこべ」のアーサー・ウインベリスと協力して脚本を書き「キューリー夫人」と同じくマーヴィン・ルロイ監督、シドニー・A・フランクリン製作、ジョゼフ・ルッテンバーグ撮影のスタッフによってものにされた。助演は新人フィリップ・ドーン及びスーザン・トラヴァース、レジナルド・オーウェン、ライス・オコナーその他で、ピータースを除けば全部英国俳優のキャストである。
心の旅路評論(11)
最後のシーンで思い出して、と思いながら見ていて、「ポーラ」と叫んでくれたところは、何度見ても良い。
私のベスト映画の一つ
映画のテーマは記憶喪失なのか癖になるのか、事故により2回も記憶喪失になってしまいポーラとの3年間は無いものに。そして消えてしまった夫。雑誌で見つけて秘書として再会しても他の子と結婚すると分かっても全く気付かず嘆かわしかっただろうにね。記憶喪失と言うのは治る見込みがあるのか無いのか分からないだろうから耐えるしかない愛は辛かろう。踊り子から大病して子供も失い、それでも夫を探し続ける果てしない涙ぐましい愛は報われて欲しいよね。心が洗われる様な麗しく素晴らしい映画だったよ。
マーヴィン・ルロイ監督作品として再鑑賞。
今回は、彼女が彼の秘書として登場する驚き
が無い分だけ冷静に観れた気がした。
この映画の最大の欠点は導入部だ。
元々彼が持っていた魅力と言わんばかりで、
何故、彼女は彼を見そめたのか、
また、彼女が彼を安全な地に導くため
とはいえ、
いとも簡単にメインキャストとも思える
踊り子としての仕事を放棄出来たのか、
との説明が不充分なため、
冒頭で作品の世界に入りにくいことだろう。
更にその後の展開でも、
冒頭の精神病院の担当医が、
何故彼女の傍にいるかも説明されない
ままだ。
そして、
善人に囲まれて、ラストシーンを描くために
都合良く進むストーリー展開は、
ルロイ監督に共通していて
「哀愁」とも同じだ。
彼を愛する姪が彼の心の奥底を見抜いて
自ら身を引くのも、
彼の担当医が
自らの気持ちを押し殺したまま
彼女の彼への愛情に理解を示すのも、
出来過ぎていて、リアリティに欠けた前提
と言わざるを得ない。
しかし、それでも感動を覚えるのは、
身分を明かさないで自分を思い出すまでと
耐えて耐えて接する彼女と、
失われた記憶に違和感を覚え続ける彼の心象
に絞って、丁寧に描き込む監督の製作姿勢
なのかも知れない。
こういった徹底した主人公の思索描写の作品
を近年は見かけないような気もする。
「哀愁」の悲劇性に比べ、
ハッピーエンドのこの作品の方が後味の良さ
はあるが、何かと説明不足感がある分、
「哀愁」の方が映画としての完成度が高い
印象を受けた。