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男はつらいよ 寅次郎紙風船評論(7)
今回の話は奥が深くて素晴らしい。(10回は観てるが)
脚本としてシリーズ中評価高いですね。
まず、マドンナ音無美紀子はテキ屋稼業で寅のような男には慣れていてよく理解している。
そして、勝手に好きになって実は相手のいるマドンナということもない!
浅丘ルリ子や竹下景子いしだあゆみもそうだったが相手がヒョロっと出てくるマドンナはつまらないし寅が気の毒すぎる。観ている方もちょっと冷めるんです。
今回の音無美紀子はそんな中でもテキ屋の未亡人。リリーと似たような生き方だ。しかも気立てがよくて働き者男を立てる苦労人タイプ。
そんなマドンナが出てくるこの紙風船。
まずダブルマドンナでストーリー展開が今どきでは当たり前な手法だが、この時代ではよく練られている。
岸本加世子と音無美紀子という世代の違う立場とキャラクターの陰と陽のコントラストがおみごと。
岸本加世子は家出少女て天真爛漫。仲良くなれば抱きついてくるし、はしたない振る舞いも若い女らしいワチャワチャヤンキー娘によくいるタイプ。
音無美紀子は、影のあるワケアリ熟女(もう少し若々しさがあってもいいが)看護疲れとテキ屋で大変なので仕方ないか。
この二人が鉢合わせすることもなくストーリーが進むから落ち着いて観れる。(面倒くさいからね)
音無美紀子は寅のテキ屋仲間で死んだ夫の家を出て東京へ出てくるところから盛り上がる、知らせを受けた寅は会いに行く。とらやに食事に誘って急接近になるがだんだん素っ気なくなる…。
テキ屋の妻で苦労ばかりしてきた音無美紀子は東京の旅館で自立しながら前に進んでいる。
そんな彼女のこれからの人生を再びテキ屋稼業の自分が壊すわけにはいかねぇ!
真っ当な仕事をして世帯を持つことを夢見るがそれも難しいことはよくわかっていた寅はこれ以上彼女に迫らないと決めたのだろう。
ヤクザな寅がネクタイまで締めて面接試験に挑戦までさせたマドンナの魅力はシリーズ中秀作であるのだ!
あぁ男はつらいよ…。
「男はつらいよ」シリーズ第28作。
Huluで「HDリマスター版」を鑑賞。
旅先で出会った家出少女・愛子。
寅さんの仲間の妻で未亡人となった光枝。
…久し振りのダブルマドンナでした。
愛子にも光枝にも優しく寄り添う寅さん。愛子に対しては保護者のような立場でしたが、光枝とは死んだ夫とした約束事もあってついに所帯を持とうと決意しました。
双方共に抱えている事情があり、「何とかしてやりたい」という寅さんやとらやの面々の人情の厚さには、人間の美しい部分が籠められているなと思いました。
光枝も寅さんに惹かれている様子でしたが、いつもの癖が発動し、所帯を持つには至りませんでした…。一念発起して受けた就職試験にも落ち、再び旅の空となったのでした…。
旅の道中で愛子の故郷に立ち寄り、マグロの遠洋漁業に旅立つ彼女の兄を共に見送った寅さん。兄妹の姿に己の想いを重ねたのかとても温かみのある場面で、救われた気がしました。