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めぐみ 引き裂かれた家族の30年評論(4)
映画「めぐみ 引き裂かれた家族の30年」
(クリス・シェリダン、パティ・キム監督)から。
どうして「拉致」(ABDUCTION)ということが起こるのか、
あまり理解もしないまま、この事件を眺めていた気がする。
そしてその答えは、作品の中でみつかった。
北朝鮮が、自国のスパイに教えていたのは、
「日本語教育ではなく、日本人化教育」だったということ。
言い換えれば「日本人そのものになること」を要求していた。
各国の情報を集める諜報部員にとっては、
不自然な仕草、行動、判断が命取りになるからだろうか。
顔の洗い方1つにとっても、各国民の動きが違うことを知り、
そこまで習得するのか、と驚きを隠せなかった。
「そのためには、生身の日本人が必要なんです」
この言葉に「拉致」の必要性をはっきり認識できた。
「真似るのではなく、そのものになる」
その為には、ホンモノの精密な観察が必要になるから、
悲しいかな、こういうことが起きるということだと知った。
では、なぜ、そこまで我が国の「情報」が必要なのか、
う〜ん・・・難しい問題だなぁ。
拉致問題が一般的に取り上げられる様になってから僅かに10年位にしか他ならない。
それまでは殆ど関心も持たれず、ただ無駄に過ぎて行くだけの時間…では無かったのだ。家族達はあらゆる可能性を求めて政府に訴えかけていたのに…。
「これは使える」
国会議員の多くがそう思ったのでは無い事を望みたいのだが、いつのまにか拉致問題が国交の無い国との政治上の“取引”に利用されているこの矛盾には茫然となってしまう。
結果として今日本国民全員が核兵器によって《実質的な拉致状態》にあるのは何故か?
‘あの日’帰国した5人の被害者の方々がタラップを降りて来た時の映像は忘れられない。
映画はアメリカ人の手によって製作されていて、所々にイメージ映像や西洋人が好む東洋調の音楽でこの悲劇的な内容を分かり易く伝える努力をしています。
一方的に‘あの日’があったから興味本位で撮られ始めたのでは?と思っていたこちらの不勉強を嘲笑う様に今まで観た事の無い映像が次々に出て来て、単なる付け焼き刃で製作されたドキュメンタリーでは無いのが分かります。
これは“本物”ですね。
必見だと思います。
(2006月年12月14日銀座テアトル・シネマ)
夫妻がテレビに映ると常に政治的メッセージを発しているし、側には何らかの形で政治家が映り込んでいたりします。
なので、どうしても「家族会の横田夫妻」と見てしまいます。
でも、この映画のためにインタビューに受け答えする横田夫妻は、普通の老いた夫婦――娘の帰りをいつまでも待っている――であり、カメラの前でケンカさえしています。
30年前に小川宏ショーで娘の帰りを涙ながらに訴えた、あのころと変わってないとさえ思えます。
でも、いざ「家族会の横田夫妻」としてカメラに写るとき、早紀江さんは入念にメイクをし、「オシャレはしない」と笑う滋さんは髪をとかす。
自分の親や祖父母にも近い年齢の夫妻が、テレビカメラに写るために身支度をし、政治家に会うために東奔西走する、その姿はあまりにもいたたまれない――本人たちが望んでいるのかいないのか、それは分からないけれど。
でも、二人を駆り立てるのは「必ず娘は戻ってくる」と信じているから、なんだと思います。
だからこそ、この事件は速やかに――願わくば全員無事に――解決してほしいと思いました。