18世紀フランスを舞台に、望まぬ結婚を控える貴族の娘と彼女の肖像を描く女性画家の鮮烈な恋を描き、2019年・第72回カンヌ国際映画祭で脚本賞とクィアパルム賞を受賞したラブストーリー。画家のマリアンヌはブルターニュの貴婦人から娘エロイーズの見合いのための肖像画を依頼され、孤島に建つ屋敷を訪れる。
エロイーズは結婚を嫌がっているため、マリアンヌは正体を隠して彼女に近づき密かに肖像画を完成させるが、真実を知ったエロイーズから絵の出来栄えを批判されてしまう。描き直すと決めたマリアンヌに、エロイーズは意外にもモデルになると申し出る。キャンパスをはさんで見つめ合い、美しい島をともに散策し、音楽や文学について語り合ううちに、激しい恋に落ちていく2人だったが……。
「水の中のつぼみ」のセリーヌ・シアマが監督・脚本を手がけ、エロイーズを「午後8時の訪問者」のアデル・エネル、マリアンヌを「不実な女と官能詩人」のノエミ・メルランが演じた。
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燃ゆる女の肖像評論(7)
静かに強烈な映画で全て正確に頭に刻印されました。
美しいブルーの海から、静物画の世界に観客を放り込んでしまう監督の技が素晴らしい。台所、パン(到着後、空腹のマリアンヌが食べてたのすごく美味しそうだった)、チーズ、ワイン、銀食器、グラス、パイプ、暖炉、蝋燭、本(オルフェの話が、後にマリアンヌが描く絵と共にすごく効いていた)、楽器(チェンバロ)、花瓶に活けられた花やハーブ、刺繍、ドレスやベッドリネンといった布、鏡、椅子やベッドなどの家具、キャンバスに筆にパレット、トランプ。全部、静物画のモチーフだ。
屋敷の中に響くのはひたすら生活の音。木の床を歩く靴の音、水やワインを注ぐ音、飲む音、暖炉の薪がはぜる音、布が擦れる音、チェンバロの音色。リアルで効果的だった。
最初はやけに眉間の皺が深いエロイーズが、どんどん綺麗に美しくなっていった。マリアンヌは泳げる、煙草を吸う、重い荷物も持つし堕胎の経験もある。何より職業画家だ、ただ描く対象は狭められ、父親の名前で絵を描く。どこにもいつでも、北斎とその娘みたいなのが居るんだ、と思った。
見られる立場(自分の意志に関わらず結婚することが決められている)のエロイーズには拒否したり言い返す強さがあって、見る側のマリアンヌには非常な用心深さと繊細さがある。エロイーズをマリアンヌは緻密に観察し、そのマリアンヌを私達が見つめる。視線の重なりが覗き見のようで罪悪感を覚えた。
エロイーズは、「夏」を聞いて感動し、涙を流し、口を開けて呼吸し、官能的な表情を浮かべ、最後は悦に入ったような笑顔になり、視線は一切動かさない。マリアンヌを見ない。自分は見られる側に徹する、あなたのことを追想しながら生きていく、とエロイーズはマリアンヌに伝えたんだ、と思う。
古城・蝋燭の灯り・肖像画
その絵画のような美しい映像
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18世紀
フランスブルターニュの孤島が舞台
結婚を控える貴族の娘エロイーズ
彼女の肖像画を依頼された画家マリアンヌ
一緒に過ごすうちに芽生えてくる感情
肖像画の完成は
二人の別れを意味する
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使われているのは2曲だけ
その効果は大きい
女性たちの合唱
🎼Laleune Fille en Feu
:ニーチェの詩から引用した歌詞をラテン語に書き起こしたオリジナル曲
ピアノで弾きそして映画のラストを飾る
🎼ヴィヴァルディ 協奏曲第2番ト短調 RV315「夏」
ラストシーン
エロイーズの表情から目が離せません
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『愛の美しさと共に美術や文学や音楽などのアートこそが私たちの感情を完全に解放してくれることを描きました』
(セリーヌシアマ監督)
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下女ソフィとの関わりもよかった
でもベッドに横たわり涙するソフィに
無邪気に手をのばす手。
このシーンは辛い
まず、この作品は劇場の大画面と音響で観て頂きたいですね。
演技、映像の迫力は素晴らしいです。
大画面に負けてません。熱量。眼力。すげーです。女優さん、メインの3人。凄く良いです。
相手をより深く知るという画家とモデルの関係性が恋愛に昇華していくお話ですが、18世紀という時代性、舞台の土地の風景、音楽、演技、そしてそこに絵画の力が重なり、恋愛の進行がドラマティックに描かれるます。静かに熱く。
中盤、女子お泊まり会モードのようなパートが大好きです。
身分を感じることなく、イチ女性として絆と力強さを感じられるから。その空間で描き出されるのは「自由」「現実」「正直」「強さ」「意思」「愛」かな?
まさに、生きたいように生活している、満たされてる時間に見えます。
18世紀は女性にとってはそれらを容易に手に入れられない時代だったのでは?と勝手に推測する故、本作は女性自身の自由を謳う作品だと思います。
後日エピソードも見事。たまらんですよ!
ラストは、まー、画面に釘付けでした。
瞬きできませんでした、いや、するのが惜しいラストカット。
切ない、切なーい。
東京国際映画祭にて鑑賞。率直な感想としては非常に分かりづらく難しかったかなというのが率直な感想である。
予告である通り同性愛に対する心の開きを非常にアートチックにゆっくりと描かれるわけだが、事前にそのような作品と知っていないと前半の描写とかどう写るのか疑問に感じた。事前にそういう作品だと言うことは僕は認識していた為、彼女らの行動、言動、表情を深く深く見ようとしてるが、事前に知らされてないと中々分かりづらさはあるようにも思えた。
劇中に男性は殆ど出て来ず(最初の小舟、最後の肖像画の運び屋、展覧会の客程度か)女性だけでゆっくりと丁寧に心情を描くところは非常にアートチックで惹きつけられるが、まだまだこのタイプの作品には未熟であり創造が追いつかなかった。
ポプュラーではなく、非常に観客を選ぶ作品であるのは間違いないだろう。