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04月20日 台灣上映
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夜の流れ評論(2)
「夜の流れ」の製作当時、年に三本以上、映画撮影していた成瀬巳喜男監督は、自分ひとりでまかなうことができなくなって、この作品だけは川島雄三監督を共同監督に起用、川島監督には若者中心が登場するシーンの演出を任せて、自分はお姑さんなどの年長者たちが登場するシーンの演出に専念した。この作品は、老練な演出の成瀬とテンポのいい演出に定評がある川島との好対照ぶりが、最大の見ものなのだ。
何より面白いのは、好対照な演出にもかかわらず、作品全体のバランスが損なわれることもなく、むしろ演出が好対照だからこそ、ちょっとテイストの違った川島雄三の個性、今までとは見どころが変わった成瀬巳喜男の特徴が観られて、それぞれの監督のファンに充分にこたえられる、いい作品に仕上がっている。
最近、大学にも映画論なる講座が増えてきているらしいのだが、監督研究や監督の演出を研究してレポートを書く、というものが出たのなら、この作品を観ることを是非ともおすすめしたい。監督の個性とはどういうものか、を気にしている人にはうってつけの作品だと思う。
料亭の女将・山田五十鈴とその娘・司葉子が板前・三橋達也に惚れてしまう。一人の男を好きになってしまった母と娘の物語である。
だが、映画はもう一組の母娘も同時に描いている。置屋の女将・三益愛子と芸者たちである。三益が旧友でもある山田に、「自分は下宿の女将と変わらない。」と嘆くように、そこの芸者たちは女として、大人として未熟な者が多く、三益はその世話に忙殺されている。
共同監督をしている成瀬巳喜男と川島雄三は、二人とも女性を描くことにおいては確かな腕を持っている。そんな二人の持ち味の生きたこの二組の母娘を通して、多くの川島作品に通底する男性社会への批判がここにも現れている。
男など、全て女の敵だと言わんばかりに、映画の終盤では女たちは男たちを見下げ果てるのだ。。
母との密通が明るみになった板前を「男というものがどういうものかよく見せてもらった。勉強になりました。」と痛罵する司。
方々で女を世話していたことが分かった父親に幻滅し、親戚の男と結婚して海外へ向かう白川。
泥酔した自分を犯した男たちへビールをぶちまけ、捨て台詞を吐いて座敷を立ち去る水谷八重子。
別れた夫に手切れ金を渡す草笛光子。しかし、彼女はその元夫に線路への飛び込みの道連れにされてしまう。
男というもののだらしなさ、弱さ、狡さにこりごりの女たちであるが、山田五十鈴がラストで三橋達也のいる神戸へ旅立つように、結局は女たちもそんな男たちを必要とするのである。
そんな大人たちに反発をした司や白川も、男の経済力を当てにする道を選ぶ。
金と色への欲望で回る世界の切なさは成瀬の作品の印であろう。
成瀬が一人で撮れば「流れる」、川島が一人で撮れば「女は二度生まれる」になるのであろう。