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ココシリ評論(4)
寒くて電気もガスもガソリンスタンドもスーパーも何もない山岳地帯で、動物保護活動をしている民族がいるのだけど、結局その活動費は政府等の援助なく苦しい。そして密猟者から得た毛皮を何故か彼らが売捌き、それを利用して燃料代など活動資金にしていた。なんだかなぁ。それってどっちが悪か分からなくなる。でも既に殺されてしまった動物は戻ってこないし、燃やされたりするよりは良いのかもしれないな。難しいテーマだった。
いいか悪いかなどの問題ではないのだ。ひとの"魂"の在り方なのだ。
チベットのココシリという豊かな自然環境を守るための、私設警備隊の人たちの実話を元にした映画。
観ながら、どれだけの志を持ち、命がけでチベット人たちが乱獲からチルー(チベットカモシカ)を護ろうとしたかがわかり、物語の重さと辛さに心苦しくなりながらも、尊敬と、崇高さと、感謝と、色々なものが混ざった気持ちになった。
ストーリーは実話ベースでかなり重たい。チルーの皮が高く売れるため、密猟者の乱獲により100万頭いたチルーは1万頭まで減ってしまう。それを防ぐためのチベット人警備隊は、出てくる主役級の人たちがみんな、殺されたり、過酷な自然環境で死んだりしていく。数十人いた警備隊のうち、生きて帰還したのはわずか4名。
また、過酷な警備隊は武器も人も足りず、お金がない。皮肉なことに、チルーを護るために、密猟者が運ぼうとしたチルーの毛皮を売って、警備隊の経費にしている。それでも、警備隊の隊長であるリータイが、
「だから何だ。はじめから非合法なことは分かっている。だからと言って、法律が何をしてくれるのだ?チベットの巡礼者は、顔や手は汚れていても、魂は綺麗なままだ。」
という言葉に、ハッとさせられる。人の決めたルールにおいて、正しいというだけでは、現実の乱獲は止められない。だから、彼らは手は汚れても崇高な魂と想いを持って、警備隊の活動を続けていた。
ココシリ横断中に流砂で死んでしまうリウや、密猟の首謀者に殺されるリータイ、他にも何人か、撃たれたり、過酷な自然環境を前に死んでいく。この様子を取材した記者が主人公ガイだが、これが実話であり、これが記事として出版されたときに、世界中で大きな問題となったという。ペンは剣よりも強し。
あまりに凄まじい話だけど、この映画を観てからチルーを観たら、いろんな想いで涙が出そうな気がする。
高度4700mの高地。激寒の地なのに、川を渡るためにズボンを脱ぐ。ココシリとは「美しい山々と女たち」という意味。毎年1万頭以上密猟されるという現実のため、自然を守るために必死なんだなぁ。
捕まえた常習犯の爺さん一家。パトロールを続けるためには食料不足で置いてけぼり。どちらも悲惨だ。途中で射殺された密猟者もいたし。
それにしても報われないリータイ隊長。やっとのことで密猟のボスに巡り合えたときには、ガス欠や車の故障などで隊は離散状態。解放した爺さんも中にいたけど、彼らに殺されてしまった。怪我人を医者に運んだリウなんて流砂地獄に埋もれてしまうし・・・
それでもガイの記事によって国が動き、ココシリは保護されることになった・・・こんな過酷な実話があったなんて・・・ドキュメンタリー風だったのも良かった。