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レイン・フォール 雨の牙評論(20)
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目を惹いたのは導入部だけ。
映像的に凝ろうとしているのはわかるが、終始それだけに頼られるとさすがに飽きる。
アクション映画の割に説明台詞が多くてテンポも悪い。
高級官僚だけが手に入れられる極秘機密ってのがあまりに陳腐で、そんなネタ、日本人なら誰でも知ってるよレベルの汚職情報で失笑。
さらにナイフ投げの文字通り投げやりなカット割りとか、無闇に大げさなBGMでB級臭さ全開と来たもんだ。
ヤクザの親分が柔道の稽古をしていたり、追っ手から身を隠すレインとみどりが旅館のふとんで枕を並べる様がどこか滑稽なのは、この手の外国人から見た日本の描写に付きもののご愛敬。
そういう意味ではかなりまともな方だとは思うんだけど。
しかし、無数の監視カメラの映像からレインたちを見つけ出すという、一番サスペンス的でなくちゃいけないところがろくに描かれていなくて、追跡シーンにまったく緊張感が無いのは致命的。
そこを巧く描けばゲイリー・オールドマンの怪演もあって、もう少しおもしろくなったはずと思えるだけにもったいない。
役者に目を転じると、椎名桔平の演技はいつものそれで、悪くはないが良くもないといった感じ。
気が短くて部下たちをまくし立てるCIAアジア支局長ウィリアム・ホルツァーを演じる名優ゲイリー・オールドマンの怪演は目に焼き付くものだが、演出がまずいので空回り。
今回やけに張り切ってるなと感じたのはレインを追う刑事役の柄本明。なんだか妙に表情豊かな芝居を見せる。
久しぶりに見たような気がする清水美沙もけっこういい。役柄の割に意外と印象に残る好演。
一方で悪い予想が当たってやはり地雷だったのはヒロイン・みどりを演じた長谷川京子。
黙っていれば凛としたたたずまいは悪くないんだが、台詞を口にすると途端にボロが出て見てられない。
一生懸命演じているんだろうけど、今の彼女にこういう重要な役どころはとても無理。
『東京が牙を剥く』というキャッチは大袈裟。ヒロイン、みどり(長谷川京子)が恐怖のどん底に落とされるような設定をなぜしないのか? なんだか解らないが、東京にCIAの支局があって、そこの支局長ホルツァー(ゲイリー・オールドマン)が部下に怒鳴り散らしているばかりでうるさい。おまけにCIAはドジの連続であまりにお粗末。
そのCIAの動きをなぜ一介の刑事タツ(柄本明)が知り得たのかと思えば、元インターポールだったとか、主人公も元米海軍特殊部隊だったとか、設定が安易すぎる。
邦画でスパイアクションは似合いませんね。どうしても甘さを感じてしまいます。俳優もそうですが、ストーリーとしても。でも、原作は元CIA工作員のようなのですが、本当なんですかね?
アクションも今一つ、ストーリーも今一つ。USBメモリの中身にも深みが、拘りを感じることが出来ません。24を意識した部分は強く感じられましたが、強く感じてしまった分だけ興ざめ。そもそも、日本でCIAがここまで表立った作戦を行う描写に現実感がなく、映画に入り込めません。ラスボスがレインからUSBメモリを執拗に奪おうとする意図も分かりません(何もしなくて良かったのでは?)
エンディングは邦画らしく、くどい。
CIAの位置を日本の情報機関に変更し、ラスボスは情報機関に入り込んだCIA。USBメモリの中身も、もっと衝撃的な内容(例えば与党幹事長にロシアから資金が流れた証拠とか)を設定すれば、ストーリー的にももっと面白くなったように思えます。