今宵、212号室で
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今宵、フィッツジェラルド劇場で評論(6)
ロバート・アルトマンの遺作であるということを事前に知っていれば、ラジオショーの終りがまるで彼の映画人生の終焉そのものを表現しているようで哀愁を感じるのですが、何も知らない人が観たらどう感じるのか・・・3代続いて新人歌手となるリンジー・ローハンがその役目を担うのだろうけど、後日談からすると歌手にはなっていないようだし・・・
途中、楽屋で静かに死ぬL・Q・ジョーンズが悲しいけど、最終回には色んなことが起こるものだ。そして白いトレンチコートの天使ヴァージニア・マドセンがラジオ番組を愛した女性という設定なので、冷静に見ている一人。なぜだか冗談もお好きなようでした・・・
この劇場は普通に現役らしいけど。
ミネソタ州セントポール1910年建築のフィッツジェラルド劇場で行われているラジオ公開番組『プレイリー・ホーム・コンパニオン』の最終公演のステージと裏側で起こる奇妙な出来事を25曲ものオールド・アメリカン・ソングに乗せてお届けする奇妙なティストのミュージカル映画?(コメディタッチかと思えばホーラーっぽさもありハチャメチャな群像劇なので仕分け不能)。
ギャリソン・キーラーは、実際の人気ラジオ番組『プレイリー・ホーム・コンパニオン』のホストだが自身の番組への思い入れが高じて、自ら企画・脚本を書いて映画化を大ファンの巨匠ロバート・アルトマン監督に懇願して実現したという。
実際の脚本を見てみたいがシナリオは本業ではないのでおそらく俳優のセリフはアドリブに委ねたのだろう、ステージ・シーンは流石だが楽屋話はどうでもいい世間話がだらだらと雑音のように流れるので閉口した。白いトレンチコートの女は事故で死んだ番組のファンで天国からの死者の御迎え役らしいのだが突飛すぎて出演意図が分からない、ホラーっぽさでスパイスを利かせたかったのだろうか。メリル・ストリープもカントリーまで歌って妙に入れ込んでいたが役柄というより尊敬するアルトマン監督との仕事が嬉しかったのだろう。カントリーやフォーク、ゴスペルとアメリカン・トラディショナル・ソングのファンからしたら垂涎物の映画だろう。歌前にギャリソンが張り切る提供CMのくだりは本人にしてみれば自慢の見せ場なのだろうが妙にチープ感を誘うのでほどほどにしておいて欲しかった。
登場人物それぞれの心のヒダが、舞台裏やステージ上で皮肉をこめながらも、ときに悲しく、ときに笑い、そして優しく表現しようとするアルトマン監督の見事な群衆演出にあらためて感動させられました。まさしく、亡きアルトマン監督のラスト・ショーのような、監督の個性がスクリーンいっぱいに表れていたのです。もうこの名監督の作品が見られなくなることの悲しさもあって、心に染み入る逸品です。
ロバート・アルトマン監督は、一作おきに駄作と好編がくる、と作品にムラがある監督さんでしたけど、アルトマン独特の個性がはまった作品は、本当にどれも素晴らしかった。「ナッシュビル」「マッシュ!」「ウェディング」「ザ・プレイヤー」「ショートカッツ」....。
アルトマン監督の名作と呼ばれるものは、どれも群集劇。それほど脚本の構成がしっかりしている、というわけでもないのに、それぞれの登場人物がしっかりと描かれていて、どれも面白い個性が光っているように見えるのは、ひとえにアルトマン監督の演出の技量以外のなにものでもないと、私は思っています。もう、こんな映画撮る人は、そうは出てこないでしょうねぇ
この劇場は普通に現役らしいけど。