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男はつらいよ 純情篇評論(10)
マドンナは、若尾文子。
メインの話は4作目と同じ。
柴又に帰ってくると自分の部屋が他人に貸し出されショックも束の間、おばちゃんの遠縁の美人マドンナと知り、いつもながらの恋の病と騒動。
マドンナは夫と別居中の訳あり。
やがて夫が迎えに来て、また失恋の旅へ。
でも、単なる二番煎じにならないサブの話や豪華なゲストキャストが充実。
序盤、子持ちの若い女と出会う。演じるは、若かりし頃の宮本信子。
長崎の五島列島の父の元へ帰る途中らしいが、船賃が無く、寅さんにお金を借りる。
寅は一緒の宿に泊まらせ、女はせめてものお金の足しにと服を脱ごうとする。
同情する寅。
俺にはあんたと同じくらいの妹が居て、もし今のあんたと同じだったら、俺は相手の男を殺すよ。
この時ばかりの寅さんは、本当に人情の世界に生きるいい漢である。
(なのに、いつもの恋の病が始まると何故あんなにおバカになっちゃうんでしょう…??)
女を父親の元へ送り届ける寅。
父親は亭主の元へ帰れと言う。
ダメ亭主でもお前が惚れて反対を押し切ってまで一緒になった男なんだから、お前が相手のいい所を伸ばしてやれ。
安易に帰ってくる家があると思うからいけない。
この父親の言葉に感銘を受ける寅。
目に涙を潤ませながら故郷・柴又と家族への思いを語る。
そしたら居ても立っても居られなくなり、柴又へ飛んで帰る寅。
序盤のこのエピソードはなかなかしみじみなのに対し、メインのエピソードはいつもながらの騒動劇という構成もユニーク。
尚、この序盤とラストにだけ登場する老いた父親は、森繁久彌!
森繁に憧れ、喜劇役者を目指したという渥美清。
この名優二人の共演シーンだけでも貴重で、見る価値あり!
柴又に帰ってきて、恋の騒動と共にもう一つ騒動が。
今の工場を辞めて独立しようと考えているひろし。
辞められたら工場は潰れる!…と大慌てのタコ社長。
寅が二人の間に立つが、ひろしには独立しろと言い、タコ社長には辞めさせないよう説得すると双方?真逆の期待を持たせたもんだから、拗れに拗れ、揉めに揉め…。
この時、タコ社長の子沢山の家族が登場。後に美保純が成長した長女役としてレギュラー出演する事に。
また、中盤でマドンナが体調を崩し、診察した医者役に、9作目から2代目おいちゃんとなる松村達雄。
このいい加減な医者役はおいちゃんよりハマってたかも。
メイン以外の話やゲストキャストが目立ち、ちと散漫した感じも受けるが、一貫して描かれるのは故郷・柴又への思い。
全く繋がりは無いが、序盤の若い女とメインのマドンナが元サヤに戻るなど、足並みを揃えている。
人情と柴又への思いを胸に、今日も旅先で、寅さんの商売文句は絶口調!
マドンナ役は若尾文子。昭和を代表する大女優が早くも登場。
・ゆきずりの関係を断る寅、かっこよすぎ。
・森繁、むごい父親(笑)
・寅の部屋に居候、またか。マドンナ若尾文子、今回寅との関係はやや薄め。
・博独立騒動。たこたこあがれ。
・とんでもすけべ医者は2代目おいちゃん。
・なんだあのマドンナ夫は。寅さん、説教の一つでもしてやってくれ!
・何してんだ、お前は、源公!でエンディング。
今作はさくらの名演が光る。ラストの別れは屈指の名シーン。完全にマドンナを喰ってしまった。こんな妹が欲しかった。
弘の独立騒動で話をまとめてやると啖呵を切った寅さんが全く何もせず混乱させるばかりでみんなに糾弾される。俺もいい年こいた大人なのに先日、きつく叱られることがありこうして寅さんはいたたまれない気持ちで旅に出るのかと、見ていて非常に癒された。
若尾文子は歯が黄色くてヘビースモーカーなのかな、今のご時世の女優さんとは違った佇まいを感じた。彼女の夫が売れない小説家で、芸術家なのに心から笑ったりできない家庭を運営していたとは、相当つまらない小説な感じがした。出て行かれて何日も過ごしていたのに平然としていて肝の座った人物だった。