2020年本屋大賞を受賞した凪良ゆうのベストセラー小説を、「怒り」の李相日監督が広瀬すずと松坂桃李の主演で映画化。ある日の夕方、雨の公園でびしょ濡れになっていた10歳の少女・家内更紗に、19歳の大学生・佐伯文が傘をさしかける。伯母に引き取られて暮らす更紗は家に帰りたがらず、文は彼女を自宅に連れて帰る。更紗はそのまま2カ月を文の部屋で過ごし、やがて文は更紗を誘拐した罪で逮捕される。“被害女児”とその“加害者”という烙印を背負って生きることとなった更紗と文は、事件から15年後に再会するが……。更紗の現在の恋人・中瀬亮を横浜流星、心の傷を抱える文に寄り添う看護師・谷あゆみを多部未華子が演じる。「パラサイト
半地下の家族」のホン・ギョンピョが撮影監督を担当。
流浪の月評論(17)
原作を読んでおくか、映画から入るかは人それぞれですが、『トゥルーロマンス』はできれば見ておいたほうがいいかもしれません。
しかし、世間では誘拐事件と扱われ、警察によって離れ離れに。
それから15年後、更紗と文は意図せず再会する。
ここからは想像を越える展開で、ふたりの葛藤やお互い言えなかった秘密に迫っていく。李相日監督作品『悪人』(2010年)や『怒り』(2016年)のように、劇中内での時間が経てば経つほど悶々としたボルテージが上がっていくため、うまく嵌ると時間を感じない作品になっている。
変なフィルターを通さずに真っ新な心で見れば、生きづらさのある中での究極の愛のようなものを見つけられるかもしれない。
許されないふたりを演じた松坂桃李と広瀬すず、緊張感の走る難しい役どころを演じた横浜流星と多部未華子、内田也哉子の融合は本作ならでは。
原作と映画では描き方も違うので、更紗と文しか知らない真実と宿命を劇場でも確かめる価値はあると思う。
松坂桃李さんは、いつもの得意分野な雰囲気だったけど、広瀬すずさんの表情がこんなにも変わって見えるだなんて…演技力や演出力もあるけど、撮影監督のチカラを感じた。
横浜流星さんのパンチとか、空手をやっているからか、こえーよ。
いろいろ映画館での鑑賞じゃないとダメだなあ、
集中力が保たないなぁ、
という作品だった。
たまたま時間ができたので公開初日に見れた。
10歳の家出少女を家で保護したことからロリコン誘拐犯になり、15年後深夜カフェで再会し、そこからコミュニケーションを取り始める。少女は預けられてた親戚の家が嫌で文との生活は安心と楽しみに満ち、充実した生活だったのを15年ぶりに思い出し、お互いにパートナーがいたが、疎遠になって魅かれ合っていく。でも、その魅かれ具合は肉体関係などではなく、一緒に時間を共有することを求めているのだ。
李監督は複雑な心情を描くのがとてもうまい。人は単純な感情・感覚だけではなく、よろこびの中に悲しみを秘めていたり、破滅と分かってても感情を抑えきれない、など。しかもそれぞれの登場人物が多くのセリフがある訳でもないが、目で演技をする役者が揃い、シーンごとのちょっとした心の動きが見てとれる。
しかも、各シーンとも丁寧に描かれているので、見逃しやん??この意味が分からないということがない。でも、余韻はしっかり持たせてくれるので映画を見たという満足感で帰宅できる。
孤狼の血シリーズを見た直後だったので、松坂桃李の違いだけでもびっくりさせられる。ヤクザまがいの警官→失敗の子という烙印を押された子ども時代を送り、自分に自信を無くした青年まで振り幅が大きい。
個人的に気になった点(映画上では追及するべきところではないが)
・自傷行為が最後のシーンになった亮はそのあとどうなったのか。またDVを他のパートナーにしているのか。
・子どもを預け不倫旅行に行った安西。その後子どもは更紗と同じ道を辿ったのか。安西は更紗と文にどんな対応をしたのか。
本作には“流れる”表現が多く用いられている。風で大きく揺れるカーテン、水、雲、そして満ち欠けによって姿を変える月。
色調、切り取り方、カメラワーク、全てにおいてため息が出るほど美しい。文の部屋や文のカフェも味がある。
原作未読ですが、脚本もグイグイとのめり込んで見てしまう巧みさが。
更紗という役に見事にハマった広瀬すずや、松坂桃李の身体作りまで含めた役者魂は言うまでもなく、更紗に歪んだ愛を向ける亮を演じた横浜流星の怪演っぷりには圧巻!
複雑な環境に置かれていた更紗にとって、文は唯一の安らぎの場所、自然体でいられる相手だった。
二人の関係が周りからは歪んだ愛、異常に見えたとしても、二人の間には確かに愛があった。
ラストで更紗が言う「その時はまたどこかに流れていこう」
他者には理解されない二人の強い絆があるんだと。
文の秘密が最後に明かされるが…ちょっと衝撃的だった(文のお母さん役に内田也哉子とは!意外な配役に驚きと嬉しさが)。
文は「誘拐事件」の加害者になってしまうが、そもそも本作の題材がかなり危ういテーマ。実際に痛ましい事件も耳にするし、特に小さな子を持つ親は、そういった人たちから子どもたちが危険な目に合わないように、と常に気をつけているはず。
だけど本作を見るとそれが一概に“悪”とも言えず、無くはない話だよねとも思ったり…
善悪二元論では語れないとても難しい内容(レビュー書くにもかなり言葉を選んで書いたつもりですが、、、)。
非常に難しいテーマを観客に投げかけている。